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姑獲鳥の夏
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読み仮名: うぶめのなつ / 英語タイトル: Ubume no Natsu
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1
] 2006/05/05
とても良い
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by
遠野
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7995
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言わずもがな、京極堂シリーズ一作目です。世間的(?)に見れば、充分な厚さであろう本書も、後に出版された同シリーズ作品を読んだ後だと、薄く感じてしまうのが不思議です。それどころか、何とはなしに物足りなく思ってしまう。なんだか毒されてしまっているなあ。
分類するならばミステリーですが、いまいち釈然としないのは何故だろう……。
ホラーと云うのも、また少しズレているような気がします。幻想小説の匂いが強い気がするのですが、これは関口巽視点で執筆されているからなのでしょうね。
本作は、彼が中心となって描かれているが故に、矢鱈と沢山、回り道を踏まされてしまいます。思考の泥沼の道連れにされたり、手の上で踊らされたり。
別の人物視点であれば、多分もっと、筋道の明瞭な作品に成っただろうけれど、それではきっとつまらないと思ってしまうのだろうな。
関口視点での京極堂との問答には、一緒になって、してやられてしまいました。
それにしても、著者の知識の幅は物凄い。一見関係ないような場所をぐるりと回らせておいて、ちゃんと本題に連れ戻してくる手腕は流石です。
古くから連綿と続く、「家」の因習に囚われた人々に纏わる物語。廃院一歩手前の病院、という舞台設定が、何とはなしにおどろおどろしく、魅力的。そこから発生する物語も、また、舞台に相応しい色彩を纏っている。
戦後の復興めざましい時代の暗がり、混濁としたさま。新しく伸びゆくものの影で未だ、わだかまるものたち。
一癖も二癖もある登場人物が、明るい部分と暗く湿った部分を行き来し、精緻な作品を織り上げています。
本作、序盤部分は場面転換も殆ど無い上に、後半部分への基盤となり、伏線へと繋がる論述がどんどん積まれてゆきます。
脳と心、意識の関係や、読み手を巧みに翻弄する論述など、大変興味深く、また楽しいのですが、如何せん目が疲れてしまう(笑)
しかし、久遠時涼子の登場後、物語が転がり出してからは、その疲れを吹き飛ばしてしまう位に面白い。終盤まで、一気に読み耽ってしまいました。
2重3重の仕掛けが解かれて行く過程は、ただただ圧巻。
終盤の展開の鮮やかさ、構成も凄まじい。描写は可也グロテスクだなあ、と思うのだけれど、独特の筆遣いに酔わされて、緩和されているようにも。秘されていた事実が明かされ、新たな展開を迎える度に、深みに嵌ってゆくのを感じました。
ラストはあまりに救いなく、遣り切れない。否、救いはあったのかもしれませんが、それでも矢張り、ひどく切ない。
しかし、構成の妙故か、据わりの悪さを感じることは無く、寧ろ、落ちる所に落ちてくれたという充足感に満たされました。
虚ろに乾いたような締めかたも良かった。
見た目にも相当のボリュームですが、中身はそれ以上。一読の価値、大いに有りです。
因みに文庫の方は、偶数頁の行が次の頁にかからないよう、編集が為されているそうです。これもまた、凄い。
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